2008年12月7日日曜日

2008年12月6日土曜日

2008年12月3日水曜日

作品紹介:掌編

「家族」

ベランダからながめる月は大きかった。

中年は少し出た腹をなでながら、涙を隠して泣いていた。

どうやら、酒に溶けたさびしさが胃にしみるらしかった。

 − 単身赴任 −

娘と電話でケンカした。

うるさがられた。

妻に愚痴るにはプライドが邪魔なのか、中年は月に愚痴っていた。

呼び止められた人のするように、中年はふと振り返った。

窓越しに、テーブルの上で携帯が光っている。

娘からの着信なのだろう。

中年は微笑んだ。

部屋に戻る中年を照らす月が差し入れた光は、こころなしか暖かかった。

作品紹介:詩

「いとしいひと」

彼女はオレを愛していた

その愛がどこから来るのか知りたくて

オレは彼女を切り刻んだ

どれほど細かく刻んでも

オレにはたどりつけなかった

オレは彼女を切り刻み

彼女の愛を失った

彼女の笑顔を失った

彼女の涙を失った

彼女を失った

オレは彼女を殺したと知った

2008年12月2日火曜日

「絶対悪」

「冷笑」がそれだろう。愛がもたらす暖かい笑いで越えてゆけると信じている。

自分の中で問題意識として常に存在しているのが「冷笑」。

自分でもぞっとするくらいの憎悪を掻き立てられる。

でもその憎しみに従って作品を作ってもあんまり響かないと思う。

憎しみには己れが何を愛しているのかの再確認以上の意味は無いのかもしれない。

読み手に開かれた、独り善がりを越えた作品……すなおに描けば良いだけの話だが、そのすなおが何とも難しい。