ある日君は突然に
幼い日々自然に出来ていた生き方、若い青い憧れが忘れさせた生き方。覚悟と意思の許、そいつを再び歩み始めること。それが僕にとって大人になることだった。
よだれかけを付け、ハイハイで街に繰り出した僕、いや、俺は、成し遂げた充足感で涙を零していた。人々の悲鳴や罵声が耳に刺さる。済まない、だが俺にはもう、こんな生き方しか。
サイレンの音が近づいてくる。俺はどこで間違えてしまったんだろう。ぼんやりとよぎる考えに見上げた青空は、立ちはだかる警官のズボンに覆い隠された。
俺は捕まった。
片想いの風景
その日俺は教室の外をぼーっと眺めていた。なんかぼーっとしすぎて背景に溶けてたっぽい。おかげでイタいやりとりを聞いちまった。
「なんで俺もてねーのかな……なぁ、俺ってどんなイメージ?」
聞くなよ。
「部屋にたっっっくさんイカ臭いかぴかぴのティッシュが転がってそう。不潔感の塊。」
そこまで言うか……。
「……お前俺のことキライだろ?」
嫌いだったら突っかかんねーって。
「さあ。ま、ひとりくらい物好きはいるかも知れないけれど、そんなに鈍感じゃ逃しちゃうんじゃない?」
お前もな。
「ひっでえなぁ、俺のどこが鈍感だよ?」
ストレート過ぎだろって!もっと意味深に行け!匂わせろっての!バカが。
「……重症ね。処置なし。」
本当、処置無しだわ。両思い……とは言わんな、こりゃ。
おかげで最高の青空も色褪せた。俺は窓の外を眺めるのをやめ、読みかけのマンガ誌を1ページ、ぺらりと捲った。再生紙のくすんだ感触が、変に指の腹に残ってムカついた。
夕暮れの瞳に映る
若い母親が乳飲み子を背にあやしながら歩いていた。夕焼けに照らされ、河原の土手を行き交う人々が皆影絵のように見える。口々に夕べの挨拶が交わされ、母親の優しい子守歌が響く。土手から見える夕陽に映える川面のように穏やかな、緩やかな時間が流れていた。
そんな折、不意に背中の赤子がきゃっきゃと騒ぎ出す。
母親は買い物袋をそっと下ろすと、負ぶい紐を緩め、なれた手つきで背の赤子を腕に抱く。
赤子のおむつに触れ首を傾げる母親は、「ああ、お乳か」と思い至り、胸元をはだけようとしたところで赤子の不思議な仕草に気付いた。
土手の反対側、夕陽や川面とは逆の向き、夜の領域となった空に手を伸ばし、しきりに何かを掴もうとしている。その小さな手を延べる先を見遣ると、煌々と照らす月だった。母親は思わず微笑み、腕の中の小さな体を抱き寄せ頬を重ね、「つーき。あれは、つき。」と落ち着いた柔らかい声で語りかけた。耳にした響きが余程面白いのか、赤子はまだことばともつかない音の羅列のような声をしきりに繰り返す。
夕陽を背に、街並みの灯りの上まだ低い月を眺める母子の背を、愛おしそうに、名残惜しそうに照らすのは沈みかけの太陽。
上記3作品のライセンス:cc-by-sa-3.0 Copyright:風流塵 2009
TODO
あとはこれらを一つづつ脚本の形にして、絵コンテを上げて、一度 Pencil でざっくりと動かしてみて、いい感じの動きになったら Synfig で作り込むって流れで思案中。もしくは Pencil で仕上げまで持っていくかもしれません。BGM はピアノの単純な旋律を即興でくっつけるとして、効果音は野外で適当にサンプリング予定です。
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描いてみたい悪
心の底から楽しみながら身近な人々のささやかな幸せを踏みにじる狂気の人を、いつか描いてみたいなあ、と。おぞましさと美しさがないまぜなその様を、淡々と日常の風景の中に。
物事を見るとき、真≠善、善≠美、美≠真、な捉え方があやうくて好みです。
黒はアクセントになって全体を引き締めます。背筋の凍るような、それでいてひどく魅力的な悪が登場する日常モノをいつの日か。
描いてみたいジャンル
エブリデイ・マジックとか、日常の謎とか、奇妙な味に強く心惹かれます。ジャンル分けが本当に意味を持つかは置いておいて、要はそういう雰囲気のあるものが表現したいっ!描ける以外は描けませんが、自然にやれる範囲にそういう世界の一端が含まれていて欲しいかもー、なのです。きゃはは。
大事にしたいこと
- テンションの低い明るさ
- 湿っぽくない優しさ
- 浮き足立たない軽さ
- 腑抜けていない柔らかさ
- 病的ではない狂暴性
- 冷たい暖かさ
お知らせ
このブログの更新頻度を8月半ばまで月1未満に下げます。
あしからず。m(_ _)m